オプルのテロワール

地質と日照はテロワールを理解するのに不可欠な要素。素朴な感動を与え、記憶に残るような、ユニークで調和のとれたワインを生み出すことだけを求めるのなら。しかし、ブドウ畑の「歴史」を理解するにはそれだけでは足りない。ブドウの古木を引き継ぐ幸運に恵まれた私は、だれが、どんな技術を用いて、いつ、どんな理由から、どのような経済・文化背景を持って、そこにそのブドウの苗を植え付けたのかを常に調べるようにしている。ブドウ畑は、明らかに「家族」の歴史の延長上にある。その家族の歴史を知ることが、それぞれのテロワールを理解する唯一の鍵であり、そこで何をすべきかを教えてくれる。土壌、地下地層、苗木の遺伝的資質、といった「先天性」に、天候や、良くも悪くも人の手による作業に由来する「後天的性質」が加わる。土と植物と人を一括して捉える「ゲシュタルト」というコンセプトを体得してこそ、初めてテロワールはその持ち味を出し得るのである。